フェルヴァールの赫槍 後編⑥ 双嵐

妄想狩猟小説
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氷の竜巻が雪原を切り裂いていた。

ベリオロスが翼を振るたびに、新しい竜巻が生まれる。

雪と氷が巻き上がり、視界は白く濁っていた。

エルンは弓を構える。

四本の矢を同時に番える。

弦が鳴る。

矢が放たれた。

四つの軌道が空中で分かれる。

竜巻の上部。

下部。

上下。

ほぼ同時。

回転が崩れる。

竜巻が消えた。

しかし。

ベリオロスが翼を振ると、すぐに新しい竜巻が生まれる。

深雪が撃つ。

ライトボウガンの弾丸がベリオの肩に当たる。

鱗が削れる。

だが、深くは通らない。

しらゆきが声を上げた。

「硬いニャ!」

深雪が冷静に言う。

「装甲が厚いですね」

エルンは竜巻を見ていた。

再び矢を番える。

四射。

竜巻が消える。

また生まれる。

しらゆきが尻尾を振る。

「これ、きりがないニャ!」

エルンが肩を回した。

指先が少し重い。

深雪が言う。

「エルンさん、大丈夫ですか」

エルンは軽く笑った。

「曲芸って言ったろ」

弓を握り直す。

「普段はやらない撃ち方だ」

再び四射。

竜巻が崩れる。

だがまた生まれる。

その時だった。

ベリオロスが翼を広げた。

二つの竜巻が並ぶ。

回転が逆。

空気が歪んだ。

深雪が膝をつく。

呼吸が詰まる。

耳鳴り。

平衡感覚が揺れる。

しらゆきが叫ぶ。

「また来たニャ!」

エルンが言う。

「下がれ!」

竜巻が崩れる。

空気が戻る。

圧力が身体を叩いた。

深雪が立ち上がる。

「……今のが」

しらゆきが言う。

「騎士団の人たちを倒したやつニャ」

エルンは頷いた。

「竜巻同士の干渉だ」

ベリオロスが吠える。

竜巻がまた増える。

しらゆきが周囲を見る。

「みゆき!」

「これどうやって倒すニャ?!」

深雪は短く答えた。

「弾が通りません」

エルンは竜巻を見ていた。

回転。

距離。

位置。

そして言う。

「同時だな」

しらゆきが首をかしげる。

「何がニャ?」

エルンが言う。

「竜巻を壊すのと」

「本体を叩くの」

「同時にやる」

しらゆきが言う。

「それって無理じゃないニャ?」

その時だった。

雪原の向こうから足音が聞こえた。

カイルだった。

ランスを支えながら歩いてくる。

肩には血がにじんでいる。

しらゆきが叫ぶ。

「ラージャンはどうなったニャ!」

カイルが答えた。

「おかげさまでな。どうにか倒せたよ。」

そしてベリオを見る。

「……で?」

エルンは短く言った。

「倒し方はわかった」

カイルは腰の袋から翔蟲を取り出す。

青白い光を放つ虫が、空中に浮かぶ。

カイルが言う。

「そうか。」

「エルン」

翔蟲を見せる。

「これでやるぞ」

エルンは一瞬だけそれを見る。

それだけで理解した。

エルンが言う。

「……なるほど」

竜巻を見て言った。

「だが、距離があるぞ」

「六式…ランスでは届かん」

カイルは肩を回す。

「まぁ」

小さく笑う。

「細かいことは俺に任せとけ」

「お前が、細かいこと?」

エルンは静かに笑うと、それ以上聞かなかった。

(だが、表面の傷は浅いが最初に受けたダメージは小さくない)

(そして、ラージャンを倒すのに既に六式を使っている)

(おそらくチャンスは一度だろう)

エルンは弓を構える。

「ミユキ」

深雪が答える。

「はい」

エルンが言う。

「ポイントは四つ」

「三つは俺が消す」

しらゆきが振り向く。

「残り一つニャ?」

深雪が静かに頷く。

「私が撃ちます」

エルンが言う。

「〇・二秒だ」

深雪は迷わない。

「合わせます」

「頼んだぞ」

カイルがランスを構える。

翔蟲が矢の先で光る。

氷嵐の中で、三人の視線が交わる。

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