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登場人物紹介
- アルデラン・カムツマギ — 後の高名な編纂者。調査隊所属。自らのルーツである東方の地の見分を広げる旅の途中で戦闘に巻き込まれる。
- 深雪(みゆき) — 凄惨な山村被害に関してカムラの里から偵察任務を請負ったハンター。
通称「静雪の射手」 - 蒼眼(そうがん)の巨獣 — 20年前にカムラの里のツワモノに撃退されたラージャン。
成長抑制がなく、規格外の巨体。雪山の山間の村民を皆殺しにしている。被害状況の確認と偵察に訪れた深雪を待ち伏せ・不意打ちし、戦闘に。
第四章 残された観測
――ここから先の記述は、私自身が後年、記憶と記録を照合しながら補ったものである。
あの瞬間、私の意識は雪と衝撃の中で断続的に途切れており、すべてを逐一見届けたわけではない。
ただし、生き延びた者として、また編纂者として、結果だけは明確に記しておかねばならない。
結論から書こう。
彼女――深雪は、巨獣を討伐してはいない。
だが――確実に、撃退した。
雷鳴予兆が極限まで高まり、空気そのものが裂ける直前。
深雪は、それまでとは明らかに異なる動きを見せた。
深雪の全身が、淡い青白い燐光に包まれた・・・ように見えた。
強く、眩しい光ではない。雪明かりに溶けるような、静かな発光。
――私は、あの現象は鬼人化の一種だったではないかと考えている。
双剣や太刀の達人たちが見せるそれと、現象としては近いよう見えた。
感情の高ぶりと集中力の極限が、身体能力を一時的に押し上げる――そうしたものなのだろうと。
それでもなお、次の瞬間に起きた現象は、私の知る狩猟の常識を完全に逸脱していた。
深雪のライトボウガンが唸りを上げる。
機関鉄蟲弾――カムラの里特有の翔蟲を用いた射撃技術――それ自体は、特別な弾種ではない。
威力が大きく局所的な破壊に有効であるものの威力に比例し反動が大きく、連射すれば射線は容易に乱れ、狙点は散る。
そのため実戦で使える場面は限られる。
熟練したハンターでさえ、十数発も続ければ制御不能になる代物だ。
しかし、深雪は撃ち続けた。
間断なく、途切れることなく。
弾道は一本の線となり、すべてが同じ部位へと吸い込まれていく。
後に整理した記録と照らし合わせても、あの連射数は常軌を逸している。
筋力だけでは不可能。反射神経だけでも足りない。
並外れた筋力・反射神経・精密動作・集中、それらを統合する技術――すべてが揃い“撃つ”という行為そのものが、呼吸や鼓動と同じ次元に落とし込まれていたとしか説明できない。
巨獣は、初めて明確な怯みを見せた。
そして――右の角が、根元から砕け散った。
必殺の雷撃は、不発に終わった。
雷光は空を裂く前に霧散し、巨体は雪煙を巻き上げて後退した。
勝敗は、そこで決していたのだと思う。
――更に仕掛けた罠を起動させれば捕らえられたかもしれず、追撃すれば討伐も可能だったかもしれない。
だが深雪は、追わなかった。
彼女は一瞬だけこちらを振り返り、私の生存を確認すると、迷いなく判断を切り替えた。
救出。
撤退。
帰還。
巨獣は谷の向こうへ消え、深雪は私の応急手当てをした後、私を背負い雪嶺を下った。
カムラの里へ戻るまで、彼女は多くを語らなかった。
ここからは、編纂者としての考察になる。
まず、深雪の奇妙な力について。
――後に、この現象は深雪の師から彼らの間で「鬼人鉄蟲弾」と呼ばれている。と聞いた。
深雪にしかできず、いつでもできる。というものではないのだそうだ。
あの異常な連射は、いかなる訓練記録にも一致しない。
仮に筋力と技量の問題だとしても、反動と照準の両立は不可能だ。
私が知る限り、同様の事例は存在しなかった。
ただ一つ言えるのは、彼女の集中力が、異様なほど高まっていた。ということだ。
感情が荒れていたわけではない。むしろ、思考は静まり返り、視線と動作だけが研ぎ澄まされていたように見えた。
人が到達しうる集中の極致――短時間、武具に頼ることなく鬼人化に似た状態になった。
――深雪の師と同様の見解。
そう表現するのが、当時の私にできた限界だった。
次に、蒼眼の巨獣の攻撃について。
後に資料庫で私は、他の地域での記録に蒼眼の巨獣によるものと推定される痕跡のある被害状況をいくつか見つけることができた。
共通しているのは、「地形が抉れた」「遺体が存在しない」「ランスを持っていたはずのハンターの『足』だけが残っていた」という報告だ。
いずれも生存者がおらず現象発生時の詳細は不明。という点も共通していた。
――私は後年、あの雷撃に「螺旋殲滅」という名を与えた。
雷属性エネルギーが、直線だけではなくさらに螺旋状に重なり合いながら放射される二重構造。
外殻は貫通力、内核は破壊力に特化している。
記録から、仮に防御系スキルを極限まで積んだランスであっても、直撃すれば盾ごと消滅――即死を免れないだろう。
この性質上、恐らく反撃竜弾のような相殺手段も成立しない。
――深雪があの初撃に対し反撃竜弾を使わなかったのは結果的に正解だったといえる。
あれは存在を「消す」ための現象だ。
最後に――
公式記録上、以後蒼眼の巨獣による大規模な殺戮は確認されていない。
だが、恐らくそれは“起きなかった”のではない。
“記録されていない”だけだ。
巨獣は敗走したが、学習した。
単独で自分を斃し得る深雪という例外。
人が持ち得ない何か。
この手記を、私は一つの警告として残す。
世界は、我々が把握しているよりも、ずっと多くの異物を抱えている。
そして――
雪の中で静かに引き金を引いたあのハンターもまた、その一つなのかもしれない。

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