フェルヴァールの赫槍 後編⑧ 戦いの後

妄想狩猟小説
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雪原に静寂が戻っていた。

さっきまで吹き荒れていた氷嵐は消え、風だけがゆっくりと雪を流している。

カイルはその場に腰を下ろした。

「……はぁ」

肩で息をしている。

腕が震えていた。

エルンが歩いてくる。

「おい」

カイルが顔を上げる。

「ん?」

エルンが言う。

「立てるか」

カイルは少し考えてから答えた。

「……たぶん」

だが立とうとして、また座った。

「いや、無理だ」

エルンが苦笑する。

「だろうな」

しらゆきが走ってくる。

「カイル殿!大丈夫ニャ!?」

カイルが手を振る。

「まぁ、死んじゃいないよ」

しらゆきがベリオロスを見る。

湖の中央。

岩に深々と突き刺さった巨大なランス。

動かないベリオロス。

しらゆきが言う。

「すごいニャ……」

「ほんとに倒したニャ」

エルンも湖を見る。

そして言った。

「おい」

カイルが答える。

「ん?」

エルンが指をさす。

「ところで……あれ」

ランス。

岩。

ベリオロス。

エルンが言う。

「誰が抜くんだ?」

カイルはしばらく黙った。

それから笑った。

「そういや……考えてなかったな」

しらゆきが尻尾を振る。

「絶対抜けないニャ!」

エルンが言う。

「王国に工事依頼しなくちゃな」

カイルが肩を回す。

「そうだな」

少し間を置く。

それから言った。

「……しかし」

「新しい技だな」

エルンが眉を上げる。

「技?」

カイルが言う。

「七式とか」

「なんか、かっこいい名前考えないとな」

エルンが即座に返す。

「やめとけ」

カイルが笑う。

「なんでだよ」

エルンが言う。

「ランス投げるとか」

「グレゴール師に怒鳴られるぞ」

カイルが少し考える。

それから肩をすくめた。

「まぁ、こんな技」

「いつもできるわけじゃないしな」

エルンが頷く。

「だな」

しばらく三人は黙って湖を見ていた。

氷の湖。

岩。

そこに貫かれたベリオロス。

しらゆきが小さく言う。

「ねぇ、みゆき」

深雪は頷いた。

「はい」

しらゆきが言う。

「すごい戦いだったニャ」

深雪は湖を見たまま答えた。

「ええ」

そして静かに言った。

「本当に」

「強い方たちです」

遠くで角笛が鳴る。

王国騎士団の救援だった。

雪原の戦いは終わった。

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