フェルヴァールの赫槍 後編⑨ ファルヴァールの赫槍

妄想狩猟小説
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王国騎士団の角笛が雪原に響いた。

馬の蹄の音が近づく。

救援隊だった。

騎士たちは湖の縁で足を止めた。

誰もすぐには動かなかった。

湖の中央。

岩。

そこに貫かれているものを見たからだ。

巨大なランス。

その槍に胸を貫かれたベリオロス。

騎士の一人が呟いた。

「……なんだ、あれは」

別の騎士が言う。

「誰がやった」

答えはすぐに見つかった。

湖の岸。

雪の上に座っている男。

カイルだった。

その横にエルン。

少し離れて深雪としらゆき。

騎士の一人が言った。

「まさか」

「本当に……」

年配の騎士が小さく笑う。

「だから言っただろう」

「あの男は」

湖の中央を見る。

岩に突き刺さった槍。

赤い布が風に揺れている。

騎士が言った。

「フェルヴァールの赫槍だ」

その男の槍は。

一度放たれれば必ず敵を貫くと言われている。

戦場でそう呼ばれるようになったのは、

もうずいぶん前のことだった。

深雪は湖を見ていた。

赤い布が風に揺れる。

槍。

氷の湖。

その光景を見ながら、静かに言った。

「……なるほど」

しらゆきが聞く。

「何がニャ?」

深雪は答える。

「どうして」

「そう呼ばれるのか」

エルンが肩をすくめる。

「俺は知らん」

カイルが笑う。

「俺もだ」

雪原に風が吹く。

赤い布がもう一度揺れた。

その槍は。

確かにそこにあった。

フェルヴァールの赫槍が。

氷の湖を貫いていた。

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