雪原に静寂が戻っていた。
さっきまで吹き荒れていた氷嵐は消え、風だけがゆっくりと雪を流している。
カイルはその場に腰を下ろした。
「……はぁ」
肩で息をしている。
腕が震えていた。
エルンが歩いてくる。
「おい」
カイルが顔を上げる。
「ん?」
エルンが言う。
「立てるか」
カイルは少し考えてから答えた。
「……たぶん」
だが立とうとして、また座った。
「いや、無理だ」
エルンが苦笑する。
「だろうな」
しらゆきが走ってくる。
「カイル殿!大丈夫ニャ!?」
カイルが手を振る。
「まぁ、死んじゃいないよ」
しらゆきがベリオロスを見る。
湖の中央。
岩に深々と突き刺さった巨大なランス。
動かないベリオロス。
しらゆきが言う。
「すごいニャ……」
「ほんとに倒したニャ」
エルンも湖を見る。
そして言った。
「おい」
カイルが答える。
「ん?」
エルンが指をさす。
「ところで……あれ」
ランス。
岩。
ベリオロス。
エルンが言う。
「誰が抜くんだ?」
カイルはしばらく黙った。
それから笑った。
「そういや……考えてなかったな」
しらゆきが尻尾を振る。
「絶対抜けないニャ!」
エルンが言う。
「王国に工事依頼しなくちゃな」
カイルが肩を回す。
「そうだな」
少し間を置く。
それから言った。
「……しかし」
「新しい技だな」
エルンが眉を上げる。
「技?」
カイルが言う。
「七式とか」
「なんか、かっこいい名前考えないとな」
エルンが即座に返す。
「やめとけ」
カイルが笑う。
「なんでだよ」
エルンが言う。
「ランス投げるとか」
「グレゴール師に怒鳴られるぞ」
カイルが少し考える。
それから肩をすくめた。
「まぁ、こんな技」
「いつもできるわけじゃないしな」
エルンが頷く。
「だな」
しばらく三人は黙って湖を見ていた。
氷の湖。
岩。
そこに貫かれたベリオロス。
しらゆきが小さく言う。
「ねぇ、みゆき」
深雪は頷いた。
「はい」
しらゆきが言う。
「すごい戦いだったニャ」
深雪は湖を見たまま答えた。
「ええ」
そして静かに言った。
「本当に」
「強い方たちです」
遠くで角笛が鳴る。
王国騎士団の救援だった。
雪原の戦いは終わった。

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