王国騎士団の角笛が雪原に響いた。
馬の蹄の音が近づく。
救援隊だった。
騎士たちは湖の縁で足を止めた。
誰もすぐには動かなかった。
湖の中央。
岩。
そこに貫かれているものを見たからだ。
巨大なランス。
その槍に胸を貫かれたベリオロス。
騎士の一人が呟いた。
「……なんだ、あれは」
別の騎士が言う。
「誰がやった」
答えはすぐに見つかった。
湖の岸。
雪の上に座っている男。
カイルだった。
その横にエルン。
少し離れて深雪としらゆき。
騎士の一人が言った。
「まさか」
「本当に……」
年配の騎士が小さく笑う。
「だから言っただろう」
「あの男は」
湖の中央を見る。
岩に突き刺さった槍。
赤い布が風に揺れている。
騎士が言った。
「フェルヴァールの赫槍だ」
その男の槍は。
一度放たれれば必ず敵を貫くと言われている。
戦場でそう呼ばれるようになったのは、
もうずいぶん前のことだった。
深雪は湖を見ていた。
赤い布が風に揺れる。
槍。
氷の湖。
その光景を見ながら、静かに言った。
「……なるほど」
しらゆきが聞く。
「何がニャ?」
深雪は答える。
「どうして」
「そう呼ばれるのか」
エルンが肩をすくめる。
「俺は知らん」
カイルが笑う。
「俺もだ」
雪原に風が吹く。
赤い布がもう一度揺れた。
その槍は。
確かにそこにあった。
フェルヴァールの赫槍が。
氷の湖を貫いていた。

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