氷の竜巻が雪原を切り裂いていた。
ベリオロスが翼を振るたびに、新しい竜巻が生まれる。
雪と氷が巻き上がり、視界は白く濁っていた。
エルンは弓を構える。
四本の矢を同時に番える。
弦が鳴る。
矢が放たれた。
四つの軌道が空中で分かれる。
竜巻の上部。
下部。
上下。
ほぼ同時。
回転が崩れる。
竜巻が消えた。
しかし。
ベリオロスが翼を振ると、すぐに新しい竜巻が生まれる。
深雪が撃つ。
ライトボウガンの弾丸がベリオの肩に当たる。
鱗が削れる。
だが、深くは通らない。
しらゆきが声を上げた。
「硬いニャ!」
深雪が冷静に言う。
「装甲が厚いですね」
エルンは竜巻を見ていた。
再び矢を番える。
四射。
竜巻が消える。
また生まれる。
しらゆきが尻尾を振る。
「これ、きりがないニャ!」
エルンが肩を回した。
指先が少し重い。
深雪が言う。
「エルンさん、大丈夫ですか」
エルンは軽く笑った。
「曲芸って言ったろ」
弓を握り直す。
「普段はやらない撃ち方だ」
再び四射。
竜巻が崩れる。
だがまた生まれる。
その時だった。
ベリオロスが翼を広げた。
二つの竜巻が並ぶ。
回転が逆。
空気が歪んだ。
深雪が膝をつく。
呼吸が詰まる。
耳鳴り。
平衡感覚が揺れる。
しらゆきが叫ぶ。
「また来たニャ!」
エルンが言う。
「下がれ!」
竜巻が崩れる。
空気が戻る。
圧力が身体を叩いた。
深雪が立ち上がる。
「……今のが」
しらゆきが言う。
「騎士団の人たちを倒したやつニャ」
エルンは頷いた。
「竜巻同士の干渉だ」
ベリオロスが吠える。
竜巻がまた増える。
しらゆきが周囲を見る。
「みゆき!」
「これどうやって倒すニャ?!」
深雪は短く答えた。
「弾が通りません」
エルンは竜巻を見ていた。
回転。
距離。
位置。
そして言う。
「同時だな」
しらゆきが首をかしげる。
「何がニャ?」
エルンが言う。
「竜巻を壊すのと」
「本体を叩くの」
「同時にやる」
しらゆきが言う。
「それって無理じゃないニャ?」
その時だった。
雪原の向こうから足音が聞こえた。
カイルだった。
ランスを支えながら歩いてくる。
肩には血がにじんでいる。
しらゆきが叫ぶ。
「ラージャンはどうなったニャ!」
カイルが答えた。
「おかげさまでな。どうにか倒せたよ。」
そしてベリオを見る。
「……で?」
エルンは短く言った。
「倒し方はわかった」
カイルは腰の袋から翔蟲を取り出す。
青白い光を放つ虫が、空中に浮かぶ。
カイルが言う。
「そうか。」
「エルン」
翔蟲を見せる。
「これでやるぞ」
エルンは一瞬だけそれを見る。
それだけで理解した。
エルンが言う。
「……なるほど」
竜巻を見て言った。
「だが、距離があるぞ」
「六式…ランスでは届かん」
カイルは肩を回す。
「まぁ」
小さく笑う。
「細かいことは俺に任せとけ」
「お前が、細かいこと?」
エルンは静かに笑うと、それ以上聞かなかった。
(だが、表面の傷は浅いが最初に受けたダメージは小さくない)
(そして、ラージャンを倒すのに既に六式を使っている)
(おそらくチャンスは一度だろう)
エルンは弓を構える。
「ミユキ」
深雪が答える。
「はい」
エルンが言う。
「ポイントは四つ」
「三つは俺が消す」
しらゆきが振り向く。
「残り一つニャ?」
深雪が静かに頷く。
「私が撃ちます」
エルンが言う。
「〇・二秒だ」
深雪は迷わない。
「合わせます」
「頼んだぞ」
カイルがランスを構える。
翔蟲が矢の先で光る。
氷嵐の中で、三人の視線が交わる。

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