蒼眼の雪嶺録③ 二重の焦点

妄想狩猟小説
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言うまでもないですが本サイトの作品はカプコンさんおよびゲームの公式な関係者様とは全く関係ない一般人の創作(妄想)となります。
しかし、もし許しがたいような問題があるようでしたら、コメント等でお知らせいただければ幸いです。

登場人物紹介

  • アルデラン・カムツマギ — 後の高名な編纂者。調査隊所属。自らのルーツである東方の地の見分を広げる旅の途中で戦闘に巻き込まれる。
  • 深雪(みゆき) — 凄惨な山村被害に関してカムラの里から偵察任務を請負ったハンター。
    通称「静雪の射手」
  • 蒼眼(そうがん)の巨獣 — 20年前にカムラの里のツワモノに撃退されたラージャン。
    成長抑制がなく、規格外の巨体。雪山の山間の村民を皆殺しにしている。被害状況の確認と偵察に訪れた深雪を待ち伏せ・不意打ちし、戦闘に。

第三章 二重の焦点

 沈黙は、長くは続かなかった。

 巨獣は、動かなかった。

 だが、それは疲弊ではない。待機だ。

 巨体の周囲で雷光が明滅する。その走り方が、先ほどまでとは明確に変わっていた。
 無駄な放電が減り、すべてが内側へと収束している。

 ――学習している。

 私は喉の奥が冷えるのを感じた。

 あの一撃を逸れた理由を、巨獣は理解していた。

 理解した上で、次はそれを許さない位置取りを選ぼうとしている。

 ハンター――彼女もまた同じ結論に至ったのだろう。

 射撃の間隔が、わずかに変わった。

 狙いは依然として関節と雷路。

 だが、そこに「誘導」が混じり始めている。

 巨獣が動く。

 いや、動かされている。

 彼女の射線は、巨獣を削るためのものではなく、

 “そこに立たせない”ための線へと変質しているように見えた。

 結果として、巨獣の足場は次第に限定されていく。

 背後は切り立った岩壁。

 左右は、雪と岩が混じる不安定な斜面。

 逃げ場は、前方だけだ。

 私は、この時初めて彼女の狙いに気づいた。
 
 ――あの戦いの中、いつの間に。。。
 
 左右の斜面に向け、編纂者の私の目でさえうっすらとしか見えない微かに光る糸のようなものが伸びていた。
 
 ――翔蟲の糸?その先には・・・爆弾!?

 彼女は地形を利用して巨獣を「制圧」する「配置」を作り出していた。

 斜面の雪と土砂――これだけの物量ならあるいはこの巨獣の動きを制止できるかもしれない。

 ――まずい。
 
 私は、その時になって初めて理解した。

 この配置、私にとって極めて危険な「配置」でもあった。

 巨獣の「射線」は、私が身を潜めている岩陰の方向だった。

 偶然ではない。
 
 ――罠が完成していたのは、彼女の側だけではなかった。
 
 いつからなのか、巨獣は戦いの「外」にいると思っていた私に気づいていた。
 
 ――そして、何かに「使う」ために私が彼女の視線に入りにくい位置取りをしながら戦っていた?
 
 ――まさか、野生の獣にそのような知性が?
 
 次の刹那、私はその答えを知ることになる。

 巨獣の視線が一瞬だけこちらへ向く。
 
 そして、巨獣は何かを投げた――私に向けて。

 ――マキムシ
 
 この地域でよくみられる小さな虫。鋭いトゲで大きなダメージはないが激しい痛みをもたらし狩猟で使われることもある。
 
 「ぐっ」
 
 思わずかすかな呻きが出る。

 その声で、彼女が初めて私の存在に気づく。
 
 刹那、彼女の目に僅かな驚愕の色が浮かんで消えた。

 戦闘の流れの中では、誤差と呼べるほどの時間。

 だが、巨獣は見逃さなかった。

 雷光が、再び口腔内へと収束を始める――私に向けて

 ――「何故?」「異常な出力」「直撃」「死」「悪意」――様々な言葉が頭をよぎる。

 帯電。

 共鳴。

 空気が、悲鳴のように震える。

 ――「あれ」が来る。

 罠の起爆はおそらく間に合わない。
 
 金属片も、偶然も、期待できない。

 彼女の視線が、一瞬だけこちらを掠めた。

 責める色はない。

 すでに驚きも、怒りもない。

 あるのは、理解だけだった。

 ――回避と救助。

 彼女の判断が、ここで二重化したのが分かった。

 直撃すれば即死であろう、巨獣の大技。

 そして、私の救出。

 どちらも、同時に処理しなければならない要素。

 彼女は、巨獣と私の「射線」に割って入った。

 距離を詰める。

 ――防御?相殺?――ランスの盾でも疑問だ。彼女のライトボウガンでは無理がある。

 これでは、「あれ」は彼女と同時に私も「消滅」させるだろう。

 合理性から見れば、最悪の選択だ。

 雷鳴が、来る。

 私は動けなかった。

 足が凍りついたように、命令を拒否する。

 そのとき、深雪の周囲で青白い燐光が揺れた。

 それは炎ではない。

 雷でもない。

 ――彼女の中で何かが、切り替わった。
 
 そう感じた。

 この先の記述は、私自身の理解が追いついていない。

 ただ、見たままを書く。

 彼女の動きが、変わった。

 速くなったのではない。

 迷いが、消えたのだ。

 雷光が放たれる。

 世界が、裂ける。

 私はその時、この場で最も無力な存在だった。

 この戦いは、個人の生死では終わらない。

 世界のどこかで、必ず再現される。そう直感が告げてした。

 ――これは、記録しなければならない。編纂者としての私の使命だ。


ここで、手記は途切れていた。

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