蒼眼の雪嶺録⑤ エピローグ・補遺

妄想狩猟小説
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登場人物紹介

  • アルデラン・カムツマギ — 後の高名な編纂者。調査隊所属。自らのルーツである東方の地の見分を広げる旅の途中で戦闘に巻き込まれる。
  • 深雪(みゆき) — 凄惨な山村被害に関してカムラの里から偵察任務を請負ったハンター。
    通称「静雪の射手」
  • 蒼眼(そうがん)の巨獣 — 20年前にカムラの里のツワモノに撃退されたラージャン。
    成長抑制がなく、規格外の巨体。雪山の山間の村民を皆殺しにしている。被害状況の確認と偵察に訪れた深雪を待ち伏せ・不意打ちし、戦闘に。

エピローグ 枠の外に残されたもの

 アルデラン・カムツマギの手記を読み終えた私は、しばらく書斎の椅子から立ち上がれずにいた。
 
 雪嶺で起きた出来事そのものよりも――それが、これほどまでに整然と、抑制された筆致で記されていることに、背筋が冷えたのだ。

 私は迷った末、この手記の存在をギルドに報告した。

 個人の覚え書きとしては異様に詳細であり、また危険個体に関する示唆が多すぎる。

 編纂者の遺稿として、黙殺するには重すぎた。

 数日後、正式な回答が届いた。

 要約すれば、こうだ。


 ――興味深い記録ではあるが、客観的事実として採用するには根拠が不足している。

 ――観測者が極限状況に置かれていたことを考慮すれば、誇張や錯誤が含まれる可能性は高い。

 ――既存の分類体系に照らし合わせた場合、当該事案は地域的異常事例の一つとして処理可能である。


 その文面は、冷静で、理にかなっていた。
 
 現場に立たず、記録を束ね、秩序を保つ者たち――言うなれば、世界を「管理するための枠組み」の内側で思考する内勤官僚にとって、この判断は避けがたいものだったのだろう。

 
 私は理解できてしまった。
 
 だからこそ、納得はできなかった。

 アルデラン・カムツマギは、確かに優れた編纂者だった。
 
 功績、精度、判断力――そのどれを取っても、彼の記録が軽んじられる理由はない。
 
 もし彼が虚構を書く類の人間であったなら、そもそも今日まで名を残してはいないだろう。

 それでもギルドは、この手記を「フィクションの域を出ないもの」と位置づけた。

 危険を過大に描き、個人を神秘化した、物語的記述。
 
 管理すべき記録としては不適切――そう結論づけたのだ。

 私は一つ、決断をした。

 この手記を、公式記録として残すことはできない。
 
 だが、完全に封じることもまた、彼の意思に反する。

 ならば――

 これは、物語として世に出そう。

 真実であるか否かは、読み手に委ねる。
 
 だが少なくとも、ここに記された恐怖と判断と選択は、誰か一人の空想ではない。
 
 雪嶺で生き残った人間が、確かに見た世界だ。

 記録は、時に枠組みを守るために歪められる。
 
 物語は、その枠の外にこぼれ落ちたものを拾い上げる。

 この《蒼眼の雪嶺録》が、いつか誰かの『違和感』として目に止まる事を願っている。

 そして――  もし再び、雪の中で同じ雷光が観測されたなら。
 
 その時、これは警告だったのだと、誰かが思い出してくれればいい。

 ここに、この記録を終える。


補遺 第三調査編纂局からの回答・抜粋

一、事案概要

 本件は、雪嶺地帯において発生した大型雷属性個体(通称:蒼眼の巨獣)との交戦事例である。
 交戦に参加したハンターは一名。
 当該ハンターは単独行動中に対象個体と遭遇し、これを撃退したとされる。

 なお、同行者として記録官アルデラン・カムツマギが存在していたが、戦闘への直接関与は確認されていない。

二、戦闘経過の整理

 アルデランの手記によれば、当該戦闘は以下の特徴を持つ。

  • ハンターは終始ライトボウガンを使用
  • 機関鉄蟲弾による異常な連射が確認される
  • 雷属性個体の角部破壊により戦闘終了

 これらの点から判断するに、本件は

「地形有利を最大限に活かした、優秀な射撃戦闘」

 の一例と考えられる。

 アルデランは記録中に“常軌を逸した集中状態”といった主観的表現を用いているが、これは極限環境下における誇張、あるいは観測者自身の恐怖による認知歪みと判断できる。

三、当該ハンターの能力についての評価

 当該ハンターが見せた連射精度は確かに高水準であると言える。
 しかし、以下の点を考慮すべきである。

  • 長年の狩猟経験による反射的操作
  • 軽量武装による反動制御
  • 三脚・アンカー等により地形に固定することによる射線安定  

 これらの条件が揃えば、理論上は同様の連射も不可能ではない。
 従って、アルデランが示唆するような

「人の域を超えた現象」

 と解釈する必要性は低い。

 青白い発光現象についても、何らかの手段による双剣携帯による鬼人化(注)、あるいは寒冷環境下における視覚的錯誤として説明可能である。
 (注)複数武具の携帯は記録当時の技術では不可能であったが、現在の技術においては可能であり、東方の独自技術体系で記録時点で限定的に実現されていた可能性は否定できない。

四、雷撃について

 対象個体が使用した雷属性攻撃について、アルデランは後年になって特別な名称を付している。
 しかし、現存する被害記録を精査した結果、当該攻撃は

  • 高出力雷属性ブレス
  • 直線的放射

 の範疇を出ない。

 彼の挙げている「他の記録」に関する調査を行ったものの、本件と直接結びつける客観的な証拠のある記録は確認できず、「防御不能」「存在消失」といった表現は、戦場における視覚的・心理的影響を加味した結果の誇張である可能性が高い。

五、総合判断

 本件は、優秀なハンターによる冷静な判断と技量によって、大型危険個体を撃退した事例として整理される。

 アルデラン・カムツマギの手記は、当時の緊張感を伝える資料としては有用だが、分析資料として用いる際には慎重な取扱いが必要である。

 特に、以下の点については再評価が望ましい。

  • ハンター個人への過度な神秘化
  • 対象個体の能力の過剰評価  記録とは、冷静であるべきだ。

 恐怖や誇張は、後世の判断を曇らせる。
 本件をもって、《蒼眼の雪嶺録》は

「地域的異常事例の一つ」

 として分類・保管する。


※追記

 本記録作成後、当該地域において同種個体の再確認は行われていない。
 また、当該ハンターに関する特異報告も提出されていない。

 以上の理由から、本件はこれ以上の追跡調査を行わないものとする。

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